音楽 - 2022年

最近こういう文化を知ったので、今年印象に残った音楽を書き散らします。

ボーカロイド

ボカロはそれまでごく稀に聴くという程度でしたが、今年に入ってより頻繁に聴くようになりました。

西島尊大 - 45:64 (2011)
www.youtube.comこれ2011年って本当?
プログレジャズ系のボカロ」というより、初音ミクが一つの楽器として用いられたプログレジャズそのものと言った方がいいかもしれません。静と動の対比が凄い。特に静→動の境界である2番の開始とそこからの無窮動の裏ピアノソロがもたらす突破感が好きです。

西島尊大 - On my way home rhapsody (2021)
www.youtube.com初見時に半分ほど聴いた辺りで、あまりの良さに「最後まで聴いてしまうとこの曲の未知の部分が無くなってしまう」という事実が怖くなってブラウザバックしてしまいました。まだ最後まで聴けていません。

lyqjw - ■■■■ (2022)
www.youtube.com一貫して聞き取られることのない言葉たちが、記号化され、4拍子に合わせて淡々と並べられていきます。

V/R Converters - 晴色アンブレラ (2021)
www.youtube.comこういう日常的空気の中で展開される明るい曲って可愛くて非常に好きです。ラテン系の軽快なオケに乗って歌われるメロディはつい口ずさみたくなります。

V/R Converters - 拡散性リアリズム (2021)
www.youtube.com上の『晴色アンブレラ』と次の『Gate of future』の中間辺りの性格、とはいってもポリリズムに不合理分割、転調も全音+四分音上げと結構やんちゃしてます。

V/R Converters - Gate of future (2021)
www.youtube.comかっこ良すぎ。ボカロでこんなにフュージョンやってる音楽があるとは思いませんでした。

澪音 - かなりふざけたね (2022)
www.youtube.comこんな素敵な音楽あります?機械音声でなければならない部類の音楽だと感じました。

離木かな - 帰宅 (2016)
www.nicovideo.jpこういうミニマルな素材発展が本当に好き。ちゃんと実験音楽してる感じがします。変化・展開の書法の豊富さが、離木かなさんのその他の作品のエッセンスという印象を受けます。

離木かな - am (2017)
www.nicovideo.jpこういう風に、感じる/作る主体としての人の実感をただただ素直に言葉に落としていけるのは本当に凄い。
今までポップスの「歌詞を聴く」という聴き方がよく分かっていなかったんですが、こういう超良質なポエトリーリーディングから慣らしていくのが良いのかもしれません。

離木かな - ほんの少しは自分から (2017)
www.nicovideo.jp断片化された言葉たちと持続音の空間が紡ぐどこまでも内省的な音楽。音楽とMVの相性が素晴らしいです。ちなみにここでは『帰宅』が引用され、「朝ってとっても白い」という対となる言葉も現れます。

クラシック・現代音楽

Gioachino Rossini - Bassoon concerto (1845)
www.youtube.comI II
ロッシーニらしい古典的で楽しい作品ですが、初めて聴いたときこの第3楽章のあまりの技巧要求に笑ってしまいました。

Erwin Schulhoff - Piano sonata No. 1 (1924)
www.youtube.comII III IV
この時代特有のウィット溢れる音使いは最高ですね。第2楽章の単純かつえげつない展開もおすすめ。

Charles Koechlin - La course de printemps (1925)
www.youtube.comケクランは独特の重厚かつ脱調性的な和声法が魅力ですが、管弦楽でもそれが全く失われないことを再確認しました。

Benjamin Britten - Suite for violin and piano (1935)
www.youtube.com普段全くブリテンを聴かないのですが、これはとても良い。

Morton Feldman - Variations (1951)
www.youtube.com多分彼の作品の中でも1, 2を競う静かさです。50年代のフェルドマンといえば図形楽譜ばかりが強調されがちですが、その裏でも80年代以降の静かな反復とはまた別方向の静謐さを実現したミニチュアが多く書かれています。

Alexandre Tansman - Basson sonatine (1952)
www.youtube.comII III
新古典主義エスプリが好き、オタクなので。

Jean Françaix - Cor anglais quartet (1970)
www.youtube.comII III IV V
新古典主義エスプリが好き、オタクなので。

Franco Donatoni - Hot (1989)
www.youtube.comひたすら耳に心地よい音が供給されるドナトーニ謹製ジャズ。

Sam Hayden - Piano moves (1990)
youtu.beピアノの反復音が変容していく簡単なコンセプトながら非常に美しい作品です。ミニマルミュージックほどミニマルで透明ではない、こういった少しえぐみのある変容的な作品が今の好みな気がします。

Georges Aperghis - Luna Park (2011)
www.youtube.com冒頭から完全に惹かれました。かっこ良すぎる。
Le corps á corpsRetrouvaillesなどの作品が分かりやすい例ですが、アペルギスはテクストやパフォーマンスの分解・再構成が非常に巧みで、本作はそれの集大成という感じがします。

Yann Robin - Le papillon noir (2018)
www.youtube.comまだ途中までしか聴けていませんが、ストーリー通り死の境界を渡り歩く超越的で冷たい空気感が非常に好きです。オペラに電子機器が出てくるとテンションが上がる。

Ben Nobuto - Emily likes the TV (2019)
www.youtube.comミニマルの大御所Christopher Knowlesのパフォーマンス音声にポップなピアノ伴奏を合わせたもの。パフォーマンス単体を聴くと伴奏が付くだけでかなり印象が変わっていることが分かります。

Ben Nobuto - SERENITY 2.0 (2021)
www.youtube.com初めて聴いたこれで完全に彼のファンになりました。
今後の現代音楽はサブカルとの融合と併せてこういった鮮烈な調性回帰と音断片コラージュが主流になっていくのかもしれません。

ジャズ

山下洋輔トリオ - 木喰い (1969)
www.youtube.comかなり感動しました。山下さんの容赦ない破壊的な演奏と、サクソフォンのニ調の旋法とが統合されて、窒息しそうなほどの眩しさをもたらしています。

峰厚介クインテット - ミネ (1970)
www.youtube.com曲単体ではなくアルバムで。楽器構成から各々の演奏までコンテンポラリーで完全に好みです。

ケイ赤城トリオ - Giant Steps (1999)
www.youtube.comGiant Stepsでこれほどのソロをバシバシ弾き続けられるの凄すぎませんか。

ケイ赤城トリオ - Contrast & Form, Pt. II (2016)
www.youtube.comステマティックな構造から混沌としたクライマックスへの推移が見事です。

ケイ赤城 - Splinter Unity (1994)
www.youtube.comピアノが巧すぎる。
こういったタイプのフリージャズをもっと聴きたいのですが、ジャズに無知すぎて何と調べればよいのかが分かりません。

まとめ

去年怠惰のあまり書き損ねてしまったので今年は気力のある間に書きました。今年はボカロを聴けるようになったことが一番の収穫でした。以前までクラシックは6-70年代前衛にありがちな剥き出しの鉄骨のような音やらパフォーマンスが好みだったのですが、この1年で急速にミニマルや協和音マシマシ系音楽に親近感を寄せている自覚があり、今回見事にそれが反映された感じがします。

そろそろ新しい音楽を聴くという行為を意識的に行わないといけなくなってきました。悲しいことです。

おわり